中絶手術

綱島ゆめみ産婦人科


<中絶手術の一般論>
妊娠中絶の方法
中絶手術の障害・合併症


妊娠中絶の方法
妊娠中絶の方法として、①内服薬による子宮内容物の排出、②吸引法、③掻爬法、④陣痛誘発法があります。

世界の潮流として、妊娠11週台までの初期中絶では、①内服薬による子宮内容物の排出、②吸引法が主に行われており、妊娠12週以上の中期中絶では、④陣痛誘発法が主に行われています。

③掻爬法は、安全性の面から他の方法より劣るとされています。
WHOは「掻爬法は、時代遅れの中絶方法であり、吸引法または内服薬による中絶方法に切り替えるべき」と勧告しています。

日本産婦人科医会も、WHOや英国の安全な中絶に関するガイドラインでは搔爬法は推奨されておらず、搔爬法を受けた女性では早産率が高く、不妊治療の経過において子宮内膜が薄い場合があり、3 回以上の搔爬法を受けた女性で子宮腺筋症の発症率が高いことに触れており、また、国際産科婦人科連合(FIGO)も吸引法を強く勧めています。

2021年7月、厚生労働省は国内の産婦人科関連団体に対して、WHOガイドラインや世界各国の国際的な動向を踏まえて、吸引法の周知を求める通知を出しました。

日本でもこの5年から10年で吸引法がメインになりました。
アメリカでは今からおよそ30~40年前の1980年代からすでに吸引法が一般化されています。

中絶手術の障害・合併症
中絶手術について書かれた「指定医師必携」という日本産婦人科医会が発行している書籍によりますと、中絶手術の障害や合併症として、次のように記載されています。

『人工妊娠中絶の障害
人工妊娠中絶の障害は、直接障害と後障害に二分される。
直接障害:子宮損傷(子宮穿孔、子宮頸管損傷)、多量出血、炎症(発熱)
後障害:月経異常、子宮外妊娠、習慣流産、次回分娩時の障害、続発不妊など。』

直接障害の子宮損傷は、粗暴な手術操作や盲目的な手術操作により発生しやすくなります。丁寧に手術操作を行うこと、超音波断層法で充分に確認して手術を行うことが大切になります。

多量出血は、帝王切開後の中絶手術であったり、進んだ妊娠週数であるほど、起こりやすくなります。帝王切開創部に手術操作を加えないように慎重に行うことや、子宮からの出血量を減らす子宮収縮薬の適切な使用が大切になります。

炎症(発熱)は、中絶手術に限らずあらゆる手術に共通して起こる事象です。中絶手術に伴って生じる炎症(発熱)は軽度から中等度の倦怠感や、37℃台の微熱や38℃台の発熱といった症状を呈しますが、ほとんどの場合、1日~2日で症状は落ち着きます。手術後に適切な抗生物質を服用することが大切になります。

後障害の月経異常は、月経血量の変化や月経周期の変化として現れます。たいていの場合、中絶手術から数カ月ほど経過すると手術前の月経状態に戻ります。

子宮外妊娠は、異所性妊娠とも呼ばれ、受精卵が子宮内膜以外の場所に着床することによって発症します。妊娠反応が強く出ているにもかかわらず子宮内に胎嚢が確認できなかったり、子宮外に胎嚢を確認することにより診断します。月経が遅れたり、妊娠検査薬で陽性が出るなど、妊娠を疑ったときには速やかに医療機関で診察を受けることが、重症化を防ぐ上で大切になります。

習慣流産は、流産を複数回繰り返すことを言います。粗暴な手術操作により稀に起こることがあります。丁寧に手術を行うことが大切になります。

次回分娩時の障害は、直接障害の子宮損傷のあとに発生することがあります。子宮損傷を起こさないように丁寧に手術操作を行うことが大切になります。

続発不妊は、搔爬法による粗暴な手術や抗生物質の適切な使用が為されなかった場合などに発生する可能性があります。手術操作を丁寧に行うこと、適切に抗生物質を使用することが大切になります。

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